ドニのベンガル虎
初秋の朝、とき号に乗って、長岡へ。「日本が見たドニ ドニの見た日本」展は、新潟県立近代美術館にて10月20日迄。
"Maurice Denis and Japan", Niigata Prefectural Museum of Modern Art.
展覧会タイトルは、展示されるフランスと日本の画家たちによる作品群を、ゆるやかに結びつけるテーマになってはいるものの、実際には、ドニをはじめとするナビ派、ナビ派の画家たちにとって大事だったゴーギャンとベルナール、象徴主義絵画までの、日本全国の美術館に所蔵される逸品(ペインティング、リトグラフ、広告美術)と、文献資料を丁寧に集めた、必見の展覧会。
これは図録も同様で、展覧会の企画者を含む、日本のナビ派の研究者たちの文章を集め、「関連年表1870-1943」などの資料も充実している。
新潟県立近代美術館が所蔵するドニの絵の中に、ひときわ大きくて目を惹く華やかな画面があった。1920年頃に制作された、ジュネーブの毛皮店のための装飾パネルの一部だという《ベンガル虎 バッカス祭》。
これは敬虔なキリスト教徒であったモーリス・ドニによる、比較的めずらしい異教的主題。やはりあまり見たことのない、トロピカルな自然風景の中に、葡萄と桃の恵みに溢れる「バッカス祭」なのに、どこか異様な山羊と、象も、豹も、なぜか「ベンガル虎」までもがアラベスクをなしている。花の色も、人びとの面ざしも、南国らしく、ドニにしては異種の明るさと世界が広がる。
道をゆくと「新米入荷」の文字が目にはいる、初秋の雨の長岡で、稀な作例を観る愉しさがあった。ちなみに今年のお米の味は、猛暑にもかかわらず、なかなか良いらしい。